税金の豆知識

Q105 一般社団法人の消費税計算方法

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Q105 一般社団法人の消費税計算方法

今回は、一般社団法人の「消費税の計算方法」について記載します。

 

1. 原則的な消費税の計算方法

 

消費税の納税額は、預かった消費税(課税売上高に対する消費税額)から、支払った消費税(課税仕入に係る消費税額等)を控除して計算されます。(Q55参照)

 

2. 補助金収入がある場合

 

(1) 普通法人の場合

補助金収入は「消費税不課税取引」ですので、納税すべき消費税は預かっていないことになります。一方、補助金事業にかかる経費支払額は、「課税仕入」として消費税を控除できますので、結果的に、課税仕入に係る消費税額分、「消費税納税額」は少なくすることができます。

 

(例) 補助金収入10,800(消費税0)、補助金経費10,800(消費税800)のみの取引しかない場合・・

 

Q105 一般社団法人の消費税計算方法

0(預り消費税)-800(支払消費税)=△800 ⇒800 税金還付されます。

 

「預かった消費税」がないのに、「支払った消費税」だけ控除できて還付されるって・・何となく変な感じがしますよね?

でも、普通法人の場合は、「補助金収入」自体が多くないので、税法上は、特段の制約なく「課税仕入等の消費税等の控除」が認められます。

 

(2) 一般社団法人の場合は?

一方、一般社団法人では、「会費」など対価性のない収入が多く計上されますので、普通法人と同じように、「仕入税額控除」を行うと、消費税への影響が大きくなります。そこで、一定の場合、仕入税額控除の金額を調整することとされています。

(『仕入にかかる消費税額の特例』)

Q105 一般社団法人の消費税計算方法

 

3. 調整が必要な一般社団法人

 

すべての一般社団法人において「仕入税額控除の調整」を行うわけではありません。

下記の要件「すべて」を満たす場合、仕入税額控除の調整が必要となります。

 

① 課税事業者であること
② その課税仕入等の課税期間において「特定収入」があること
③ 「特定収入割合」が5%超であること
簡易課税の適用がないこと

では・・「特定収入」「特定収入割合」とは・・どういったものなんのでしょうか?

 

4. 特定収入・特定収入割合とは?

 

(1) 特定収入って?

特定収入とは、「資産の譲渡等の対価」に該当しない「一定の収入」です。
以下の8つが例示されています。

①租税 ②補助金 ③交付金 ④寄付金 ⑤出資に対する配当金
⑥保険金 ⑦損害賠償金
⑧その他(資産の譲渡等の対価に該当しない負担金、他会計からの繰入金、会費等、喜捨金 (お布施、戒名料、玉串料など))

 

(2) 特定収入割合

特定収入割合は、「収入全体」のうち「特定収入」がしめる割合です。
計算式は以下の通りです。

Q105 一般社団法人の消費税計算方法

(※)これらの定義は、Q87 課税売上割合って何?を参照ください)

 

5. 仕入税額控除金額の調整

 

上記の特定収入割合が5%超の場合、『仕入税額控除』の金額を調整しなければいけません。調整の計算式は以下のとおりです

控除対象仕入税額=課税仕入の税額-特定収入にかかる課税仕入等の税額(※)

(※)「特定収入にかかる課税仕入等の税額」は、以下の2つで構成されます。

(1) 使途が課税仕入等にのみに限定された「特定収入」の税額
(2) その他の「特定収入」にかかる税額

(上記は、便宜的に「全額控除」の場合を前提に記載しています。個別対応方式や一括比例配分方式(Q55参照)の場合、異なる算式となりますが、ここでは省略します)。

 

(1) 使途が課税仕入等にのみ限定された「特定収入」の税額

① 例

● 使途が「建物購入など」に特定されている「寄付金」
● 使途が、「車両の購入など」などに特定されている「補助金」

建物や車両購入時に支払った消費税は、本来は「仕入税額控除」の対象となりますが、「寄付金や補助金のような特定収入を原資としていることが明らかなものは、仕入税額控除を認めません!」という趣旨です。

 

② 計算式

使途が課税仕入等にのみ限定されている特定収入(税込)×8/108

 

(2) その他の「特定収入」にかかる税額

① 例

● 使途が特定されていない「寄付金」「配当金」「保険金」等。

使途が特定されていないものであっても、「特定収入であるという点は上記(1)と同様なので、同じく一定の調整が必要ですよ!」という趣旨です。

 

② 計算式

(課税仕入等(税込)×8/108-(1))×調整割合(※)

Q105 一般社団法人の消費税計算方法

計算式はややこしいんですが・・
「その他の特定収入の割合」を用いて算定しているだけです。

 

6. 具体例

 

以下の「一般社団法人」の「消費税納税額」を算定してみましょう。

● 収入の内訳

内訳 税込 内消費税
課税売上 6,480万円 480万円
非課税・免税売上 0円 0円
不課税売上
(会費収入・使途は特定されていない)
2,000万円 0円
不課税売上
(車両購入使途限定の補助金)
108万円 0円

 

● 支払の内訳

税込 内消費税
課税仕入等(全額控除できる) 1,080万円 80万円

 

● 簡易課税の届出は提出していない。

 

(仮に普通法人だった場合の消費税納税額~)
480万円(課税売上消費税) ― 80万円(課税仕入消費税)

=消費税納税額400万円となります。

 

(1) 特定収入割合の計算

(2,000万円+108万円)/(6,000万円+2,000万円+108万円) = 26%>5%

 

(2) 控除対象仕入税額

① 使途が課税仕入等にのみ限定された「特定収入」の税額(=車両購入補助金)
108万円 × 8/108 = 8万円

② その他の「特定収入」にかかる税額 (=会費収入)
(1,080万円 × 8/108 ‐ 8万円) ×0.25(※)=18万円
 
(※)調整割合 2,000万円 / (6,000万円+2,000万円) = 0.25

③ 控除対象仕入税額
80万円-(8万円+18万円) = 54万円

 

(3) 消費税納税額

480万円-54万円=426万円

 

(4) 結論

⇒普通法人と比べ、26万円消費税納税額が増えたことになる!!

 

参照URL

● 国、地方公共団体や公共・公益法人等に特定収入がある場合の仕入控除税額の調整
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6495.htm

● 国税庁 パンフレット(国、地方公共団体や公共・公益法人等と消費税)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/shohizei.pdf

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