税金の豆知識
Q121 免税⇒課税事業者変更時の「棚卸資産」の消費税仕訳
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前期まで「免税事業者」で、当期から「課税事業者」になった場合、前期から繰り越されてきた「棚卸資産に含まれる消費税」の取扱いに・・ちょっと迷いませんか?
前年まで免税事業者の場合、棚卸資産の金額は、前期末に「税込」で仕訳をしています。
一方、免税事業者だった「前期」から繰り越してきた「棚卸資産」は、明らかに「課税事業者」になってから販売される商品です。
この前年から繰り越されてきた「棚卸資産」に含まれる「消費税」は、課税事業者になった年度で、消費税の控除ができるのか?できないのか?という疑問です。
1. 結論 課税仕入にできる
免税事業者時代から繰り越されてきた「棚卸資産」に対応する消費税は、課税事業者になった年度の「課税仕入れ」にできます!
確かに、この「棚卸資産」は免税事業者の時に購入したものですが、実際販売するのは、「課税事業者」になってからです。つまり・・課税事業者になった年度以降に「課税売上」は計上されるんだから、バランスを保つために、仕入れの方も、課税事業者になった年度で、「課税仕入れ」にしてもよいよ!ってことです。
この「課税仕入」(=仕入税額控除)は、「実際、当期に販売されるかどうかに関係なく」、当期に販売されるものとみなして計算できます。
2. 具体例
● 前期まで免税事業者、当期より「課税事業者」になった。
● 当期の期首商品324,000円(税込)は、全額免税事業者時代の仕入である。
● 当期に、上記商品324,000円(税込)を、432,000円(税込)で販売した。
● 当期の取引は、上記以外ないものとする(当期の仕入はゼロ。)
● 当期の棚卸資産の仕訳をしてみてください。
(1) 仕訳
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
期首 | 期首商品たな卸高(対象外) 仮払消費税(手入力) |
324,000 24,000 |
商品(対象外) 仕入(手入力・対象外) |
324,000 24,000 |
「仕訳方法」は、色々考えられますが、当事務所では、
● 期首商品たな卸高は、税込の金額で戻します。
● 期首商品に対応する消費税は、手入力で「仮払消費税」「仕入」の仕訳を行います。
なぜこういう仕訳をするかというと・・
「期首商品たな卸高」は、前期末の「期末商品たな卸高」と金額するはず!という考え方が根本にあります。
この考え方から仕訳をすると、「期首商品たな卸高」は、前期の「期末商品たな卸高324,000」(税込)と同じ金額で仕訳をするしかありません。
一方、「期首商品たな卸高」に含まれる消費税は、課税事業者になった年度で「仕入税額控除」ができるため、「仮払消費税」を計上しなければいけません。
したがって、マニュアルで「仮払消費税」を計上し、貸方の相手科目は、「期首商品たな卸高」ではなく、「仕入」(対象外)で仕訳するしかありません。
・・というロジックです。
(PLの表示)
売上 | 400,000 |
---|---|
期首商品たな卸高 | 324,000 |
仕入 | △24,000 |
期末商品たな卸高 | 0 |
売上総利益 | 100,000 |
(2) 申告書の記載(抜粋)
消費税申告書では、期首商品に含まれる「消費税」を、別建で記載する欄が設けられています(下記⑬)。上記例をもとに「申告書」を作成すると、以下の通りとなります。
(付表2)
・・・ | ・・・ | ・・・ |
---|---|---|
課税売上割合(④/⑦) | ||
課税仕入れに対する支払対価の額(税込み) | ⑧ | 0 |
課税仕入れに係る消費税額(⑧×6.3/108) | ⑨ | 0 |
・・・ | ||
納税義務の免除を受けない(受ける)こととなった場合における 消費税の調整(加算又は減算)額 |
⑬ | 18,900 |
課税仕入れ等の税額の合計額(⑨+⑪+⑫±⑬) | ⑭ | 18,900 |
・・・ |
● ⑧の額(課税仕入れに対する支払対価の額)は、会計ソフトの「消費税集計表」より転記します。今回の例ですと、「0」となります。
● 一方、期首商品に含まれる消費税は、
手入力で⑬の欄に入力します(24,000円×63/80)。
● 上記の結果、当期仕入額はゼロでも、期首の棚卸資産に対応する消費税は、「課税仕入」として認識でき、消費税は正しく計算されます。
3. 課税事業者から免税事業者になる場合は?
今までの逆のパターンですが、当期まで「課税事業者」だったが、翌年から「免税事業者」になる場合はどうでしょう?当期まで課税事業者だったので、仕入は「課税仕入れ」で計上し、「棚卸資産」は税抜きで計上しているはずです。
こちらの論点は・・さっきまでの「逆」を考えると、答えはでてきます。
結論、課税事業者の最後に残る「棚卸資産」は、当期の仕入税額控除にできません。
確かに、この「棚卸資産」は課税事業者の時に購入したものですが、実際販売するのは、「免税事業者」になってからです。
つまり、免税事業者になった年度以降は、「課税売上」が計上されないので、バランスを保つために、仕入れの方も、課税事業者最後の年度で「仕入税額控除」を認めていないんですね。
この期末棚卸資産は、「実際翌期に販売されるかどうかに関係なく」、翌期に販売されるものと「みなして」、計算を行います。
申告書の記載方法は、上記と同じく、⑬欄に記載します。符号は逆になりますね!
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