税金の豆知識

Q91 所有権移転外リース取引の借り手の税務処理(中小企業)

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Q91 所有権移転外リース取引の借り手の税務処理(中小企業)

「リース取引」の会計処理は、意外と苦手にされている方が多いかもしれません。
原則処理と例外処理、あるいは、会計処理と税務処理で異なる論点があるため、混乱してしまうことが原因の一つかもしれません。

今回は、ほとんどの中小企業様に関連する「税務処理」を中心に解説します。

 

1. 税務上のリース取引って?

法人税法上、「リース取引」とは、資産の賃貸借で、①解約不能②フルペイアウトの要件を満たすものです(会計上の「ファイナンス・リース取引」と定義はほぼ同じ)

解約不能 リース期間中「中途解約」できないもの、又は中途解約する場合、未経過リース料の90%以上を支払うこととされているもの。
フルペイアウト リース物件の経済的な利益を実質的に享受し、物件の使用に伴う費用を実質的に負担するもの。

コピー機などのリースは、上記に該当しないため、税務上のリース取引には含まれず、「賃貸借処理」のみとなります(オペレーティングリース取引と呼ばれます)。

 

2. 所有権移転リース取引って?

税務上のリース取引のうち、以下のすべてに該当しない取引です。

ちょっと・・回りくどい定義ですが・・。

イメージですが・・リース契約終了後に物を返還し、終了時に「買取費用」を支払う、あるいは契約終了後は、「再リース料」を別途支払うようなリース取引です。

譲渡条件付リース取引 ⇒契約上、リース物件の所有権移転を約束
(終了時に無償で譲渡)
割安購入選択権付リース取引 リース期間終了後、著しく有利な価額で買い取る権利があるもの
特別仕様物件のリース取引 借手以外にリースや売却することが困難な物件を対象としているもの
リース期間がリース資産の
法定耐用年数に比して相当短いもの
リース資産の法定耐用年数の60%~70%の年数を下回る期間のもの

ちなみに、上記に該当するリースは「所有権移転ファイナンスリース」と呼ばれます。

 

3. 所有権移転リース取引の税務処理(借り手)

(1) 原則処理

① 仕訳

リース取引開始時に、「売買」と同じ処理を行います(売買処理)。

● リース料総額で「リース資産」及び「リース債務」を計上(※)
● リース料支払時は、「リース債務」を取り崩す。
● 決算時は他の固定資産同様、「減価償却」を行う。

 

(※)契約上「利息部分」が明記されている場合は、利息部分を別建てしますが、実務上は、利息部分が明記されていない取引が多いと思いますので、省略します)

 

② 減価償却方法・償却期間

リース期間で「定額法」による減価償却を行います。

 

③ 消費税の取扱い

消費税上の取扱いも、「取引開始時に売買処理」となりますので、リース取引開始時に、リース料総額に対する消費税全額を計上し、全額、当該年度の「仕入税額控除」を行います。

 

(2) 例外処理(中小企業)

① 会計処理

中小企業(※)は、「賃貸借」と同じ処理を行うことが認められています。
(賃貸借処理)

● 取引開始時は仕訳を行わない。
● リース料支払時に「支払リース料」で計上
● 決算時に「減価償却」は行わない。

 

② 減価償却方法・償却期間

賃貸借処理ですので、「減価償却」はありません。

賃借人が費用処理した「支払リース料」は、法人税上、減価償却費として「損金経理」した額に含まれます(リース料が均等払であれば、支払リース料=償却限度額と一致するため、税務申告調整は不要)

 

③ 消費税の取扱い

賃貸借処理ですので、「減価償却」はありません。

リース料支払時に、支払リース料に対応する消費税を計上する「分割控除」が可能です。

 

(※)中小企業って?

金融商品取引法の適用会社or会社法上の会計監査人設置会社以外の会社。
中小企業は、「中小企業の会計に関する指針」or「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)という「会計基準」の適用が可能です。
中小会計要領では、所有権移転外ファイナンスリースの会計処理は、「賃貸借処理」が原則となっているため、例外処理が可能です。
実務上、中小企業はこの「例外処理」で行い場合が圧倒的に多いです。

 

4. 借り手の仕訳例(所有権移転外リース取引)

● リース料総額6,480千円(税込)
● リース期間60か月。60回払い(108千円(税込)/月×60回)
● 「利息部分」は契約上明記されていない。
● 「例外処理」での消費税は、リース料支払時に分割控除を採用するものとする。

 

(1) 原則処理
借方 貸方
取引開始時(※1) リース資産
仮払消費税
6,000
480
リース債務 6,480
リース料支払時
(支払毎)
リース債務 108 預金 108
毎期末(※2) 減価償却費 1,200 リース資産 1,200

(※1)契約時の貸方「リース債務」を、リース債務6,000千円、未払消費税480千円に分けるやり方もあります。
しかし、「未払消費税」を区分すると、税務署への支払と誤解する可能性があるので、当事務所では、「リース債務」に含めて処理します。
(あくまで「リース債務」は、リース会社に対する支払を表す)
 
(※2)6,000千円÷60か月×12か月=1,200千円

 

(2) 例外処理(中小企業の特例)(単位:千円)
借方 貸方
取引開始時 仕訳なし
リース料支払時
(支払毎)
リース料
仮払消費税
100
8
預金 108
毎期末 仕訳なし

消費税は、契約時に全額控除も可です。

 

5. 償却資産税の取扱いは?

「所有権移転外リース取引」は、償却資産税の申告対象外となります
(貸している側が申告する)

 

参照URL

(所有権移転外リース取引)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5704.htm

(リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分))
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5702.htm

(所有権移転外ファイナンス・リース取引につき賃貸借処理した場合の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/shitsugi/shohi/16/23.htm

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