税金の豆知識
Q81 高額特定資産って?
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1. 高額特定資産を取得した場合の特例って?
平成28年度税制改正により、「高額特定資産」を取得した場合、取得日の属する年度初日から3年間、「原則課税」が強制適用となります。
「原則課税」が強制適用=具体的には、以下の変更ができなくなります。
● 課税事業者から、免税事業者への変更ができない
● 原則課税から、簡易課税への変更ができない
2. 高額特定資産って?
高額特定資産とは、1単位1,000万円以上(税抜)の棚卸資産or調整対象固定資産のことをいいます。「棚卸資産」が含まれているので、実務的な影響も大きいと思います。
3. イメージ
例えば、2017年に高額特定資産を取得した場合は、以下となります。
年度 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
2016年 | 原則課税 | |
2017年 (高額特定資産取得) |
原則課税 | |
2018年 | 免税・簡易選択適用可能 | 原則課税 |
2019年 | 免税・簡易選択適用可能 | 原則課税 |
● 高額特定資産取得時に「免税事業者」である場合や、「簡易課税制度」を選択している場合には適用されません。
● 既に簡易課税制度を選択している会社が、基準年度売上が5,000万円を超えたため、結果的に原則課税となる年度に「高額特定資産」を取得した場合にも適用されません。
4. 消費税へのインパクト
(1) 例題
● 原則課税の会社
● 2016年 売上・仕入なし
● 2017年に、棚卸資産(高額特定資産)2,000万円取得。
● 2018年に、上記棚卸資産を3,000万円で売却。
● 上記以外の取引はなし
● 2017年中に簡易課税選択適用届を提出済(みなし仕入率80%の業種)
時期 | 売上(税抜) | 仕入(税抜) | 消費税 |
---|---|---|---|
2016年 | 2,000万円 | 2,000万円 | 0円 |
2017年(取得) | 0円 | 2,000万円 | 160万円 |
2018年(売却) | 3,000万円 | 0円 | 240万円 |
”
改正前(簡易課税適用可) | 改正後(簡易課税適用不可) | |
---|---|---|
2016年 | 消費税ゼロ | 同左 |
2017年 | 160万円還付 (2,000万円×8%) |
同左 |
2018年 | 48万円納付 240万円×20% (みなし仕入率控除) |
240万円納付 (簡易課税適用不可) (3,000万×8%) |
摘要 | (※1) | (※2) |
(※1)2016年売上は2,000万円のため、改正前であれば、2018年は「簡易課税」の選択が可能です。この場合、2018年の納付額は、みなし仕入税率の控除により、48万円の納付となります。
(※2)2017年に「高額固定資産」を取得しているため、改正後は、3年間「簡易課税」の選択ができません。この場合、2018年は「原則課税」の適用が強制され、納付額は240万円となります。
なお、仮に、2016年の課税売上高が1,000万円未満の場合、改正前であれば、2018年は「免税事業者」となりますが、改正後は「免税事業者」になれません。
5. 自己建設の場合
自己建設の場合は、 原材料及び経費累計額が1,000万円以上(※)となった翌年から、「建設等完成日が属する事業年度初日」から3年間、原則課税が強制適用となります。
(※)1,000万円以上の判定は、「免税事業者の期間中や簡易課税制度選択期間」中の原材料等の支出は含まれません。
(1) 例題
● 原則課税の会社
● 2016年に工事開始 ⇒ 2019年に完成
● 2017年末の建設費用累計1,100万(税抜・以下同様)
建設費用 (累計) |
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|---|
2016 | 300万 | 原則課税 | |
2017 | 1,100万 | 原則課税 | |
2018 | 1,500万 | 免税・簡易選択適用可能 | 原則課税 |
2019(完成) | 2,000万 | 免税・簡易選択適用可能 | 原則課税 |
2020 | – | 免税・簡易選択適用可能 | 原則課税 |
2021 | – | 免税・簡易選択適用可能 | 原則課税 |
● 2017年末に、建設費用累計額が1,000万円以上(※)になったため、その翌課税期間(2018年)から、原則課税が強制適用
● 2019年に建設完了、建設完了事業年度初日から3年間(2019年~2021年)原則課税が強制適用となります。
(2) 影響
原材料及び経費累計額が1,000万円以上となった日が起点となり、終期が「工事完了」を基準とした3年間となります。
つまり、工事完了時期が遅くなればなるほど、原則課税の期間(免税事業者・簡易課税選択ができない)が長くなってしまう実務上の影響があります。
6. 届出
基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、「高額特定資産」を取得した場合には
「高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出手続」の届け出が必要です。
参照URL
(高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除等の特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6502.htm