税金の豆知識

Q80  FACEBOOK広告に消費税?電気通信利用役務

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Q80  FACEBOOK広告に消費税?電気通信利用役務

 

平成27年10月1日以後、海外の事業者(アマゾン等)からインターネットで書籍等を購入した場合には、消費税がかかるような改正がありました(以前は不課税)。
これは、結構大きな改正ですよ!

取引の内容 改正前 改正後
国外事業者⇒国内事業者向け取引 クラウドサービス等 不課税 課税
国外事業者⇒国内消費者向け取引 電子書籍等 同上 同上

 

1. 対象取引は?

対象は、「国境を越えた電子通信利用役務の提供」です。電子書籍のほか、音楽配信サービス、クラウドサービスや、ネット広告の配信などです。グーグルやフェイスブックなどに広告宣伝を依頼するケースも多いと思いますが、消費税がかかってきますので注意です。

 

2. 改正の背景

今までは、1,000円(税抜)のリスティング(広告宣伝)を、ヤフージャパン(国内事業者)に依頼した場合は、1080円(税込)の支払が必要でしたが、グーグルの場合は、1,000円でよかったんですね。
同じサービスなのに、「国内と海外で差が生じるのでおかしい」という背景があったんです。

 

3. 改正による二つの区分

消費税の納税義務者を誰にするか?という観点で、取引を以下の二つに区分します

「事業者向け」と「消費者向け」

まず、「消費者向け」の場合は、他の消費税と同様、消費税を先方に支払うだけなので、実務にはそこまで大きな影響はありません。
しかし、「事業者向け」の場合は、消費税を支払った方(国内事業者)が、消費税の申告・納税を行う(リバースチャージ方式)に変わりますので、大きな影響があります。

あまり気にしていないかもしれませんが、実は、消費税の申告・納税は、普段「資産の譲渡を行う方」(=消費税をもらう方)が申告しています。しかし、「事業者向け」取引に係る消費税の申告義務・納税義務者は、消費税を支払う方に「リバース」されています。なので、リバースチャージ方式と呼ばれています。

取引 納税義務者 摘要
国外事業者⇒国内事業者向け取引 国内事業者 リバースチャージ方式
国外事業者⇒国内事業者向け取引 国外事業者 従来方式

 

4. 国内事業者向け取引(電子通信利用役務の提供)の仕訳は?

(1) 課税売上割合95%以上の事業者・簡易課税を適用している事業者

課税仕入となりますので、原則的には「仮払消費税」を認識することになります。
ただし、結論を言うと、課税売上割合が95%である事業者や、簡易課税を適用している事業者については、当面の間、課税仕入がなかったものとみなされますので、影響がありません。つまり、今まで通り「仮払消費税」は認識しません。

(例)
事業者向けのFACEBOOK広告(共通仕入)を10,000円支出した場合
(支払時に消費税を認識しない方法)

借方 貸方
通信費(対象外) 10,000 普通預金(対象外) 10,000

 

(2) 上記以外の会社

課税仕入となりますので、原則通り「仮払消費税」を認識します。
税法上は、仕入税額控除を制限することで納税額を発生させる仕組みとなっています。

上記(1)の例題での仕訳は、以下の通りとなります。
(課税売上割合70%・この取引以外はない会社とします。)

借方 貸方
通信費(課税)
仮払消費税
10,000
800
普通預金
仮受消費税(※)
10,000
800

なんか気持ち悪い仕訳ですね。仮払と仮受が両建計上されるので、基本的には相殺されて、納税額はゼロになるんじゃ?と思うかもしれません。しかし、課税売上割合95%未満の事業者は、元々「仕入税額控除」が全額できません(Q55参照)。
つまり、仮払消費税が全額控除できない(=全額相殺できない)結果、納付税額(未払消費税)が生じるわけですね。
(※)この「仮受消費税」は、課税標準額に含まれます。

(決算時の仕訳)

借方 貸方
決算時 租税公課(※)
仮受消費税
240
800
仮払消費税
仮払消費税
未払消費税
240
560
240

(※)控除対象外消費税です。課税売上と非課税売上に共通する「課税仕入」は、課税売上割合のみ控除できます(Q55参照)。
800円×(1-課税売上割合70%)=240円・・控除対象外消費税

なお、支払時は「仮払消費税」を認識せず、決算時に仕訳する方法も認められています。
(決算時に消費税を認識する方法)

借方 貸方
決算時 租税公課 240 未払消費税 240

 

5. 国内消費者向け取引(電子通信利用役務の提供)の仕訳は?

「課税取引」となりますので、原則通り「仮払消費税」を認識します。
ただし、課税売上割合に関わらず、仕入税額控除が制限されるケースがありますので、この点が、「事業者向け」と異なります。購入先が「登録国外事業者」かそうでないか?によって異なりますのでちょっと複雑ですけど。

(1) 登録国外事業者からの購入の場合

国内の課税取引と同様の仕訳となります
つまり、課税売上割合が95%以上の会社は、全額仕入税額控除が可能です。
(例)
国内法人が、消費者向けの電子書籍(共通仕入)を海外から10,000円(税抜)で購入。それ以外の取引なし(課税売上割合100%とする)

借方 貸方
取引時 通信費(課税)
仮払消費税
10,000
800
普通預金 10,800
決算時 未収消費税(※) 800 仮払消費税 800

(※)課税売上割合100%の会社は、国内課税取引同様、全額仕入税額控除が可能です。

 

(2) 登録国外事業者以外からの購入

登録国外事業者からの購入の場合は、課税売上割合に関わらず、当面の間「全額」仕入税額控除が制限されますので、決算で全額費用に振り替えます
つまり、結論的には、支払った消費税は、結果的に消費税を支払った国内事業者が負担していることになります。

上記(1)の例題で、登録国外事業者以外からの仕訳は以下となります。

借方 貸方
取引時 通信費(課税)
仮払消費税
10,000
800
普通預金 10,800
決算時 租税公課 800 仮払消費税 800

(※)課税売上割合100%の会社でも、全額仕入税額控除が制限されます。

 

(3) 登録国外事業者とは?

登録国外事業者名簿に記載がある事業者のことを指します。

 

6. その他の改正

「国境を越えた電子通信利用役務の提供」の輸出に関しては、従来は課税(免税取引)でしたが、不課税取引とされました。

⑤ 国内事業者⇒国外事業者 課税(輸出免税) 不課税
⑥ 国内事業者⇒国外消費者 同上 同上

 

参照URL

(国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/01.htm

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