税金の豆知識

Q112 個人事業主の損益通算って何?

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Q112 個人事業主の損益通算って何?

法人と異なり、個人の所得税計算は、「収入」の種類によって計算方法が異なります(10種類あります)。

例えば、「給与収入」と、「株の売却」は、収入の種類が異なるので、所得税の計算方法が異なります。

また、原則的に、種類ごとに黒字、赤字が混在している場合でも、黒字と赤字を相殺することはできません。つまり、赤字と黒字の所得を合算して「総所得を減らす(=税金を下げる)」ことは、原則的に認められていないんですね。

(例)「給料所得」黒字1,000万・「株の譲渡」赤字1,000万の場合
⇒黒字と赤字を相殺して「所得をゼロ」にすることはできません。

ただし、例外的に、黒字と赤字を相殺できる場合が認められています。
これが「損益通算」と呼ばれるものです。損益通算を行うと、税金が安くなりますよ!

 

1. 損益通算って何?

損益通算とは、赤字(損失額)の所得と黒字(利益)の所得を相殺する制度です。
損益通算は、例外的に認められていますので、損益通算ができる所得は、以下の4つの所得(赤字)に限定されています。

 

(1) 損益通算できる所得
事業所得 事業から発生する所得
不動産所得(※1) 不動産(土地や建物)の貸付で発生する所得
総合課税の譲渡所得
(※2)(※3)
資産を譲渡した際に発生する所得
(土地建物、株式、生活に通常必要でない資産以外
山林所得 山林を伐採して譲渡(or立木のまま譲渡)で発生する所得

(※1) 不動産所得赤字のうち、土地等取得時の借入金利子は「損益通算」不可

(※2) 土地建物・株式は分離課税のため対象外(後述「居住用不動産」のみ例外)

(※3) ゴルフ会員権、別荘、書画、骨とう品など「生活に通常必要でない資産」の譲渡により生じた損失は「損益通算」不可。
なお、生活用動産の譲渡などは、そもそも「非課税」のため、「損益通算」対象外。

 

(2) 損益通算できない所得

例えば、損失が生じる所得でも「一時所得」「雑所得」は損益通算できません
「雑所得」は「経常所得」に含まれるので・・よく間違えがちなんですが。

これらの所得は、赤字でも、他の所得(事業所得など)と損益通算できない点にご留意ください。

(雑所得の例)
総合課税のビットコイン、分離課税のFXなどです。

 

2. 損益通算の特例

実は・・上記4つ以外にも「損益通算」が認められる特例 があります。以下の2つです。

 

(1) マイホームの譲渡損失の特例

土地建物・株式の譲渡は「分離課税」ですので、原則として損益通算の対象外となりますが、「マイホームの譲渡損失」については、損益通算が認められる特例があります。また、損益通算の後、なお余った損失は、「3年間の繰越控除」も可能です。

 

(2) 上場株式の譲渡損失と配当所得との損益通算の特例

上場株式の譲渡損失VS配当所得、公社債等の譲渡所得、利子所得については、損益通算が認められる特例があります(配当所得は「申告分離課税」選択の場合に限る)。

 

3. 損益通算の順番

まず、各所得を、「下記4グループ」に分けます。
繰り返しますが、「損益通算」ができる所得は限定されていますので・・間違えないように!

第1グループ 利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・総合課税の雑所得
第2グループ 総合課税の譲渡所得・一時所得(&分離課税の居住用不動産譲渡損)
第3グループ 山林所得
第4グループ 退職所得

 

(1) 順番

第1ステップ
上記区分されたグループ内で「損益通算」を行います。
第2グループ内で「一時所得」と通算する場合、50万円特別控除後で、2分の1前の金額と通算する点、注意です(所法22)。

第2ステップ
第1ステップの結果、まだ赤字が残る場合は、第1グループと第2グループで「損益通算」を行います。
順番は、総合短期譲渡⇒総合長期譲渡⇒一時所得の順に差引いていきます。

第3ステップ
第2ステップの結果、まだ赤字が残る場合には、第3グループを「損益通算」します。

第4ステップ
第3ステップの結果、まだ赤字が残る場には、第4グループを「損益通算」します。

最後に念押ししますが・・分離課税の雑所得(FX、先物)や、譲渡所得(上場株式等)で黒字がでていても、他の所得との「損益通算」はできません。

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