税金の豆知識

Q109 法人設立前の「経費」「売上」「契約書」などの取扱い

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Q109 法人設立前の「経費」「売上」「契約書」などの取扱い

当たり前ですが、ビジネスを行うためには「準備期間」が必要です。
法人設立登記を待たずに、事前に仕入をしておく場合もありますよね。
売上を獲得するには、「設立前」に営業しておかなければいけませんし、経費も発生します。場合によったら「設立前に売上が決定」するケースもあるかもしれません。せっかく売上がとれたのに、設立前だから断る?ことなんでないですよね(笑)

こういった設立前の「経費」や「売上」は、設立後の法人の損益として計上することができるのでしょうか? 設立前なので、法人はできていないし・・だったら個人事業主として「経費」や「収入」を計上するの?・・なんて迷われる方もいるかもしれません。

 

1. 法人税上の取扱い(法人税基本通達2-6-2)

 

普通に考えると、設立前は法人が成立していませんので、取引主体になることはできません。だからといって、設立前の「経費」や「売上」を、個人事業主として計上するのも??・・手間がかかりますよね。

そこで、実務上の手間を考慮して、法人税上、法人設立期間中の損益につき、以下の規定が置かれています。

(原則)

法人の設立期間中に生じた損益は、・・その設立後「最初の事業年度」の所得の金額の計算に含めて申告することができる。

 

(例外)

法人の設立期間中に生じた損益は、・・その設立後「最初の事業年度」の所得の金額の計算に含めて申告することができる。

 

つまり・・原則的に、法人設立期間中に生じた損益は、その法人の第1期の損益に含めて計上するということです。
例えば、設立前に仕入れた商品代や、設立前の家賃などは、第1期の経費になります。同様に、設立前に生じた「売上」も、第1期の売上として計上します。

 

2. 通常要する期間って?

 

設立期間が「通常要する期間」を越えて長期にわたる場合は、法人の第1期の損益に計上できません。逆にいうと・・「通常要する期間」を越えた場合は、個人の損益として計上しなければいけないよ?ということなんですね。

では、この「通常要する期間」とは?どれくらいなのでしょうか?

特に明文規定はありませんが、実務上、通常設立に要する期間は1か月程度であるため、概ね、1か月程度が「通常要する期間」と解釈されています。

 

3. 個人事業主が法人成りする場合は?

 

個人事業主が、「同じビジネスで法人成り」する場合は、法人の設立登記前の損益はすべて「個人の事業所得」として申告することが必要となります。
以前から個人事業を展開しているのであれば、あえて、個人の損益で計上することにしても「実務上弊害がない」からですね。

ただし、設立法人で行う事業が、個人事業で行っていたビジネスと関連のない「新たなビジネス」の場合は、設立期間中の損益も、法人の第1期の損益に含めて申告することが可能です。

 

4. 創立費との関係

 

法人設立前の費用でも、一定の支出については、経費ではなく、創立費(資産)として計上することができます。例えば、「定款の作成費用」などですね。

経費にできないから損?そんなことはありません。創立費(資産)に計上すれば、所定期間内の任意の時期に経費の計上ができることを意味しますので、有利な取り扱いとなります。

創業当初は赤字のケースが多いと思いますので、この規定は非常に大切ですよ!詳しくはQ1をご参照ください。

 

5. 法人設立前の契約書・請求書・領収書などの名義・宛名は?

 

法人設立前に、法人名義の「契約書」や「請求書」を作成したり、法人名義の「領収書」を入手することはできるのでしょうか?
例えば、設立前に事務所を借りる場合など・・悩みそうですよね?

結論ですが・・設立前は「法人格」がありませんので、法人名義での契約や請求書は作成できません。領収書などもすべて「個人名義」になると思われます。

ただし、個人名義になったとしても、法人第1期の「経費」や「売上」に計上できる点は変わりません。さきほどお伝えした通りです!

設立前に事務所を借りた場合、以下のようなパターンの実務が多いようです。

①設立前は手付だけを支払い、実際の契約は法人設立後に行う。
②設立前は個人名義で契約を行い、設立後に法人名義の契約に変更する(個人名義の賃貸借契約に、「法人設立後に契約を法人に移管する」旨の文言を入れておく)。

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