税金の豆知識
Q90 限度額を超えた通勤交通費の所得税・消費税の取扱いは?
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通勤交通費は、法人側と個人側で税金の取扱いが異なる部分があります。
法人税上は、支払った額全額が「損金」、消費税上は「全額課税仕入」となります。つまり、法人側では、全額損金になります(通勤に「通常必要と認められる範囲内」です)。
一方、所得税上は、税金がかからない「非課税限度額」が定められていて、限度額を超える金額については、個人側で「所得税」がかかってきます(給与とされます)。
つまり、「限度額」を超えた部分の取扱いが、「法人側」と「個人側」で異なってきます。
1. 通勤交通費の非課税限度額(所得税)
所得税上は、「通勤交通費」につき、下記の「非課税限度額」が設けられています。
1カ月当たり限度 | 摘要 | |
---|---|---|
電車・バス等 (通勤定期代も含む) |
15万円 | |
自動車や自転車 | 片道距離によって限度あり | 有料道路代は別途加算 (上限は合計15万まで) |
組み合わせも可能です。例えば、最寄り駅まで自転車&電車利用する場合は、自転車の距離に応じた限度額+電車通勤代となります(上限は月15万まで)
2. 所得税非課税限度額を超えた場合の取扱い?
所得税VS法人税・消費税では、取扱いが異なる点に注意です。
(1) 所得税上の取扱い(個人側)
個人側では、「所得税非課税限度額」を越えた部分は「給与」とされ、所得税がかかります。
(2) 法人税・消費税上の取扱い(法人側)
法人側では、「所得税非課税限度額」を超えた分も、「通勤に通常必要と認められる範囲内」であれば、「損金」&「課税仕入」となります。
3. 仕訳例
(例題)
● Aさんの給料 額面30万。別途「通勤交通費」16,200円(税込)支給。
● 上記の通勤交通費16,200円は、「通勤に通常必要と認められる額」です。
● Aさんの「通勤交通費」の「所得税非課税限度額」は10,800円とします。
● 預り金、源泉の仕訳は無視。課税事業者・税抜処理とします。
Aさんに支払った通勤交通費16,200円は、「通勤に通常必要と認められる範囲」内なので、法人税、消費税税上は、全額損金に認められます。
ただし、所得税上の通勤交通費非課税限度額は10,800円なので、限度額を超えた分は「給料」扱いとなります。
仕訳は以下となります(カッコ書きは消費税の扱い)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
給与(対象外)
通勤交通費(課税)(※1) 給与(課税)(※2) 仮払消費税(※3) |
300,000
10,000 5,000 1,200 |
現金 | 316,200 |
(※1)限度額10,800円÷1.08=10,000円
(※2)通勤交通費16,200円のうち、「非課税限度額」を超える額は「給与」処理。
(16,200円- 10,800円) ÷ 1.08 = 5,000円
→所得税上の限度額を超えた分も、消費税上は「「課税」として処理できます。
(※3) 限度額を超えた分も含めて、消費税は課税処理が可能ですので、
16,200÷1.08×0.08=1,200円
(注意事項)
通常、会計ソフトでは、「給与」という科目の初期設定は消費税「課税対象外」となっています。つまり、非課税限度額を超えた部分を「給与」科目で処理しても消費税は自動計算されません。
ですので、非課税限度額を越えた部分は、科目「給与」&「課税仕入」に手修正する必要があります。上記例だと、5,400円(税込み)の部分となります。
4. 法人税・消費税上の「通勤に通常必要であると認められる部分の金額
運賃や時間、距離等の事情に照らして、「最も経済的かつ合理的」な経路で通勤した場合の金額と言われています。一般的には以下の解釈のようです。
● 電車。バス通勤
所得税の非課税限度額に関わらず、支給額が、最も経済的かつ合理的な額であれば
「損金算入」が認められます。ただし、新幹線のグリーン料金などは×です。
● 自転車通勤の方に支給する場合は?
所得税上の「非課税限度額」の範囲内の金額であればOK。
おそらく、超えた部分の「合理的根拠」の算定が困難だからだと思います。
● 徒歩通勤者に支給した場合は?
全額×。理由は、自転車通勤と同様だと思われます。
参照URL
(非課税とされる旅費の範囲9-3)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm
(消費税 課税仕入れの範囲11-2-2)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shohi/11/02.htm
(消費税 通勤手当)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/shitsugi/shohi/16/04.htm
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