税金の豆知識
Q60 貸倒損失の実務上の判断は?
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得意先の倒産や、連絡がつかないなど・・債権が回収できない場合、
会計処理に迷われるかもしれません。
税務上は、「貸倒損失」っていう制度があって、損金算入が認められています。
でも・・税務署は簡単には「貸倒損失」を認めてくれないんですね。
かなり要件が厳しくなっています。
1. 3種類の貸倒損失
税務上は、以下の3つの「貸倒損失」が認められています。
種類 | 内容 |
---|---|
法律上の貸倒(法基通9-6-1) | 法的な債権の切り捨てや、債務免除を行った場合など |
事実上の貸倒(法基通9-6-2) | 債権全額が回収できないことが明らかになった場合 |
形式上の貸倒(法基通9-6-3) | 継続取引先で、取引停止後1年以上経過した場合や、回収コストが債権を上回る場合 |
2. 法律上の貸倒って?
(1)内容
法律上の貸倒には、次の3つのものがあります。
内容 | 貸倒処理年度 | 貸倒損失額 | |
---|---|---|---|
① | 会社更生法や民事再生法他、法令の規定による切捨額 | 事実が発生した事業年度 | 切り捨てられた金額 |
② | 法令手続以外の債権者集会の協議決定等、合理的な基準切捨額 | ||
③ | 債務者の債務超過状態が相当期間継続し、金銭債権の弁済を受けることが できない場合に、書面で行った債務免除額 |
書面で債権放棄の通知をした日 | 書面による債務免除額 |
(2)特徴
・法的な債権切捨の「損金算入時期」は、すべて「決定」があった時です。
「申立」や「手続が開始」された時点では、まだ「貸倒損失」を認めてもらえません。
(貸倒引当金の計上は可能)
・債務免除は、先方が弁済能力を失っている場合が前提です。
「単に債務免除通知書」を送ればよいというわけではありません。
一般的には、債務超過状態が相当期間(3 年~5 年)継続している場合などです。
・法律上の貸倒は、「損金経理」の要件はありません。
(3)必要な資料
・認可決定や協議決定等に基づく切捨額の決定書
・債務免除通知書
・先方決算書、信用調査会社のレポート等(債務免除の場合)
3. 事実上の貸倒って?
(1)内容
事実上の貸倒は、以下の内容となります。
種類 | 貸倒処理年度 | 貸倒損失額 |
---|---|---|
債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できない ことが明らかになった場合(担保物はその処分後、保証債務は履行後) |
債権全額が回収できないことが明らかになった事業年度 | 債権全額-処分価格 |
(2)特徴
・全額回収不能の場合です。一部でも回収できる場合は×です。
・債務者の資産状況、支払能力等を判定する必要がある。
・担保や保証債務がある場合は、処分や履行後までは貸倒計上できません。
(担保順位等により、実質全額回収不能な場合は、OK)
・事実上の貸倒は、「損金経理」が要件となります。
(3) 「全額が回収できないことが明らかになった」とは?
(4) 準備しておく資料
・先方決算書、信用調査会社のレポート
・取引先から戻ってきた宛先不明郵便
・債権督促の記録、議事録等社内資料
4. 形式上の貸倒
(1)内容
形式上の貸倒には次の2つのものがあります。
内容 | 貸倒処理年度 | 貸倒損失額 | |
---|---|---|---|
① | 継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、 支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止し、 1年以上経過したとき(担保物のある場合は除く) |
「取引停止時」「最後の支払期限」「最後の支払時」のうち最も遅い時から1年以上経過した事業年度 | 売掛債権-備忘記録1円 |
② | 同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が、取立費用 より少なく、支払を督促しても弁済がない場合 |
督促をしても弁済がない日 |
(2)特徴
・「事実上の貸倒」と異なり、全額回収不能である必要はありません。
・債務者の資産状況、支払能力等を判定する必要がある点、「事実上の貸倒」
と同様ですが、「債権が、経済的には無価値となっていない(形式上の貸倒)」
点が異なります。
例えば、回収努力をしたが、先方の返済能力不足の結果、1年以上回収が滞っている
ことなどが判断要件となります。
・継続取引なので、「売掛金等」が対象となります。
貸付金や単発取引は含みません(※)
・担保物がある場合、処分完了までは、1年の期間から除かれます。
・損金経理が要件となる点、「事実上の貸倒」と同様ですが、
「形式上の貸倒」は、「備忘記録」を残す必要がある点、異なります。
(※)実際に複数回継続取引がなくても、継続意思があって顧客情報を管理している場合
などはOKとされています。
(3)準備する資料(判断に至るプロセス)
・基本的に事実上の貸倒と同様です。
(4)実務上の判断
上記要件では、いつまでたっても貸倒処理できないことがあるかもしれません。
実務的には、多少、上記条件に当てはまらない場合でも、ある程度常識的な「社内ルール」を作成して、貸倒処理をしている会社もあります。
要は、実態判断なので、常識の範囲ということでしょうね。
5. 貸倒損失の計上時期
貸倒損失は、利益操作防止の観点から、「回収不能が明らかになった事業年度のみ計上が認められ、その後の事業年度において損金算入することは認められません。
あとから貸倒損失がわかったからといって、発見した年度で簡単に貸倒損失にできない点、留意しましょう。
参照URL
金銭債権の貸倒https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_06_01.htm
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