税金の豆知識
Q57 調整対象固定資産って?
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1. 固定資産購入時の消費税の取り扱いは?
消費税の納税額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて算定します
(消費税納税額の算定方法(Q55)参照。)
また、支払った消費税は、原則、支払年度に全額控除できますので、固定資産購入時の消費税も同様です。この点、法人税等では、耐用年数で費用化(減価償却)するのと比べると、消費税はお得ですよね。
2. 調整対象固定資産って?
でも・・固定資産は通常、長期にわたって使用されるため、購入時の状況だけで仕入税額控除を確定させると、その後の実態にそぐわないことがあります。そこで、一定の固定資産が次のケースに該当する場合、仕入税額控除を調整することになっています。これが調整対象固定資産と呼ばれるものです。
なお、この調整対象固定資産の規定は、課税事業者に対する規定ですので、免税事業者は関係ありません
● 課税売上割合が著しく変動した場合
● 使用形態を転用した場合(課税業務用⇔非課税業務用)
3. 一定の固定資産とは?
建物、構築物、機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品などのうち、一取引単位の取得価額(税抜金額)が100万円以上の資産
(土地などの非課税資産や棚卸資産は除く)。
4. 調整する必要がある会社
一括比例配分方式や個別対応方式で、共通部分の按分計算を行う会社。
なので、仕入税額控除が全額可能な会社は、そもそも関係ありません(注)
(課税売上高が5億円未満、かつ課税売上割合が95%以上の会社)
(注)なお、当初仕入税額控除を全額行えた会社も、その後、課税売上割合が著しく増減した場合は、調整が必要なケースがあります。
5. 著しく変動とは?
① 当初の課税売上割合(A) VS その後3年間の「通算課税売上割合」(B) を比較
50%以上の変動がある場合⇒著しく変動に該当します。
(1)仕入消費税額に加算する場合(支払税額が安くなる)
(BーA) ÷ A ≧ 50% の場合です。 (ただし、B-A≧5%の場合のみ)
(2)仕入消費税額に減算する場合(支払税額が高くなる)
(AーB) ÷ A ≧ 50% の場合です。 (ただし、A-B≧5%の場合のみ)
6. 調整額
以下の金額を、第3年度の仕入消費税額に加算or減算します。
加算・・調整対象固定資産消費税額×(B-A)
減算・・調整対象固定資産消費税額×(A-B)
7. 具体例(課税売上割合が変動した場合)
● 建物をH26年3月期に購入 税込8,640万円(消費税640万円)。
平成28年3月期末も、継続して保有しているとします。
● H26年~H28年3月期の課税売上割合は以下の通り。
(いずれの期間も課税事業者とします)
H26/3 | H27/3 | H28/3 | 3年合計 | |
---|---|---|---|---|
課税売上高(税抜)① | 3,000万円 | 4,000万円 | 6,000万円 | 13,000万円 |
非課税売上高② | 9,000万円 | 1,000万円 | 2,000万円 | 12,000万円 |
売上合計③=①+② | 12,000万円 | 5,000万円 | 8,000万円 | 25,000万円 |
課税売上割合(①÷③) | 25% | 80% | 75% | 52% |
(1)調整対象固定資産の判定
8,640万円×100/108=8,000万円≧100万円 ⇒ 調整対象固定資産に該当
(2)H26年3月期の課税売上割合
3,000円÷12,000万円=25%
(3)H26年~H28年3月期の通算課税売上割合
13,000万円÷25,000万円=52%
(4)著しい変動かどうか?の判定
(52%ー25%) ÷25% =108% ≧ 50%
かつ、52%-25%≧5%⇒著しい変動に該当!
(5)加算額の計算
640万円×(52%-25%)=172.8万円
⇒H28年3月期の仕入消費税額に加算します(=支払税額が安くなる)。
8. 免税事業者・簡易課税との関係は?
原則として、調整対象固定資産を取得した当初課税期間から3年間は課税事業者となり、免税事業者の選択ができません。また、簡易課税制度を選択することできない点注意です(注)
(注)「課税事業者選択届出書」を提出した年度&翌事業年度に、「調整対象固定資産」を取得した場合のみ。
参照URL
(課税売上割合が著しく変動したときの調整)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6421.htm
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