税金の豆知識

Q24 簡易課税の会計処理/具体例と留意事項

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簡易課税制度って何?

消費税の納税額の計算方法

企業が納付する消費税の計算方法は、二つあります。
どちらを選択するかによって納税額が変わってきます。
預かったものを支払うだけなのに何で税額が変わるの?っていう質問もありそうですが・・
中小事業者の事務負担への配慮から、簡便的な方法が認められているんですね。

 

  1. ①本則課税
    売上高等に対する消費税額から、仕入等に対する消費税額を差し引いて納税額を算出する計算する方法です。つまり、預かったものから支払ったものを差し引いて余りがあれば納付する、通常のやり方ですね。この計算方法では、不足の場合、つまり消費税の支払が預かった金額より多ければ、逆に消費税の還付が受けられます
  2.  

    1. ②簡易課税
      売上高に「みなし仕入率」を乗じて納税額を計算する方法です。つまり、実際に支払った消費税額に関係なく、売上高から業種ごとに決められたみなし仕入率を掛け合わせて納税額を算定することになります。

     

    みなし仕入率

    みなし仕入率は業種によってあらかじめ定められています。

     

    卸売業 小売業 製造業等 その他事業 金融・サービス業等 不動産業
    90% 80% 70% 60% 50% 40%

     

    本則課税と簡易課税の納税額の計算例

    (例題)
    ● 卸売業(みなし仕入れ率90%)
    ●税抜売上1,000(消費税80)・税抜仕入500(消費税40)

     

    本則課税の納税額 売上消費税80-仕入消費税40=差引消費税納税額40
    簡易課税の納税額 売上消費税80-仕入消費税72(※)=差引消費税納税額8

    (※)売上1000(税抜)×みなし仕入率0.9(卸売業)×8%(消費税率)=72
     
    どうですか?納税額が全然違ってきますよね。
     

    上記例の仕訳例(税抜処理)

    (原則課税の場合)

    借方 貸方
    ①仕入時 仕入
    仮払消費税
    500
    40
    現金 540
    ②売上時 現金 1,080 売上
    仮受消費税
    1,000
    80
    ③中間納付時 仮払金 5 現金 5
    ④決算整理時 仮受消費税 80 仮払金
    仮払消費税
    未払消費税(※)
    5
    40
    35

    (※)80-40-5(中間納付)-35
     
    (簡易課税の場合)
    ①~③は上記と同様

    借方 貸方
    ④決算整理時 仮受消費税 80 仮払金
    仮払消費税
    未払消費税(※1)
    雑収入(※2)
    5
    40
    3
    32

    (※1)80-72-5(中間納付)=3
    (※2)貸借差額
     

    簡易課税を選択できる要件

    簡易課税は、中小企業だけに認められています。

    (1)適用要件
    1. ①基準期間の課税売上高が5000万円以下
      基準期間とは、前々事業年度(個人の場合は前々期間)を差し、当該基準期間の課税売上高が5000万円以下でなければ適用できません。ここでの5000万円というのは、税抜売上高を指しますのでご注意を!
    2.  

      1. ②「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署への届出
        ここで、非常に大事な注意があります。この届出書は、選択する課税期間初日の前日までに税務署へ提出しなければいけません。例えば、平成26年7月1日から始まる課税期間で簡易課税制度を選択する場合は、平成26年6月30日までに届出を提出する必要があります。注意しましょう。

       

      (2)2年間原則課税変更不可

      そして、最初に簡易課税制度を選択してから、2年間はこの制度による申告が強制適用されます。この間は原則課税で申告することができませんので注意しましょう!
       

      (3)終了するときの手続

      2年間経過した後は、原則課税に変更が可能です。簡易課税制度をやめようとする場合には、やめようとする課税期間の初日前日までに、『消費税簡易課税制度選択不適用届出書』を提出しなければいけません。

       

      例題

      (例題)
      ● 平成25年事業開始、平成26年度中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出
      ● 「消費税簡易課税制度不適用届出」は提出していない 
      ● 資本金等の額は、1,000万円未満
      特定期間の売上又は給料は、1,000万を超えない

       

      年度ごとの消費税適用関係をまとめると、以下となります。

      年度 課税売上高 申告 根拠
      平成25年度 1,500万円 免税 基準期間なし
      平成26年度 800万円 免税 基準期間なし
      平成27年度 3,500万円 簡易課税 2年前売上5,000万以下
      平成28年度 5,200万円 免税 2年前売上1,000万以下
      平成29年度 4,000万円 簡易課税 2年前売上5,000万以下
      平成30年度 7,000万円 原則課税 2年前売上5,000万超
      平成31年度 7,000万円 簡易課税 2年前売上5,000万以下

       

      基準期間の課税売上高が1,000万円以下で「免税事業者」になった場合や、5,000万円を超えた場合でも、翌期以降の課税期間に簡易課税制度の要件を満たしていれば、改めて届出を提出しなくても簡易課税制度による申告が継続されます(上記例では、平成31年度)

       

      簡易課税制度はほんとに得?

      簡易課税を選択しても、実際は、先ほどの例のように得なケースばかりではりません。

      (1)設備投資が多い場合は本則課税が有利

      本則課税では、支払消費税額の方が大きい場合に還付を受けることができますので、例えば大きな設備投資を行うと、支払消費税額が増えるので、本則課税で還付を受けられ有利になることがあります。なぜなら、簡易課税が適用された場合には、支払消費税いくら多くても消費税は還付されませんので。
       

      (2)2年変更不可⇒2年間の予測が必要

      また、いったん簡易課税制度を選択すると、2年間は原則課税に変更できないことにも注意です。実際にどちらを選ぶかは、みなし仕入率を掛けて計算した仕入控除額が多いのか、支払った消費税額が多いのか前年度実績や、来年度の投資計画などを考慮して有利な方を選択することになります。
       

      参照URL

      (簡易課税制度)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm

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