税金の豆知識
Q118 所得拡大促進税制の具体例
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従業員の給料等が、前期等と比べて増加した場合、法人税が安くなる制度があります。
「所得拡大促進税制」(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額(所得税額)の特別控除)と言います。今回はこの「所得拡大促進税制」についてお伝えします。
1. どんな制度?
所得拡大促進税制とは、
● 青色申告者が
● 国内雇用者に対して給与等を支給する場合
● 給与等支給額が一定額以上増加した場合に、
● 増加額の10%を法人税額(又は所得税額)から
控除することができる制度です。
(POINT)
● 法人だけでなく、個人事業主でも、適用は可能です。
● 事前申請は不要ですが、確定申告の際に明細書を添付する必要があります。
2. 適用要件
要件は3つです。
① | 当期の雇用者給与等支給額÷基準期の雇用者給与等支給額≧103% (中小企業者等以外は105%)(※1)(※2) |
---|---|
② | 当期の雇用者給与等支給額>前期の雇用者給与等支給額 |
③ | 当期の継続雇用者平均給与等支給額>前期の継続雇用者平均給与等支給額 (中小企業者等以外は、2%以上増加が必要) |
(※1)平成29年3月期以降の数値です。
(※2)中小企業者等以外・・資本金1億円超
(POINT)
● 要件①②は総額で比較、要件③は1人当たりで比較する要件となっている。
● 要件③だけ、「継続雇用者」となっている点に留意。
雇用者給与等支給額 | 雇用者に対して支給した給与・賞与。 ● 役員及びその特殊関係者(役員の親族等)は除く |
---|---|
基準期とは? | 平成25年4月1日以後開始する事業年度の直前事業年度。 ⇒3月決算だと、平成25年3月 |
継続雇用者とは? | 前事業年度、適用年度でそれぞれ1回以上給与等の支給がある国内雇用者。 ⇒前事業年度中の退職者や、適用年度の新入社員は含まれないということ ● 雇用保険一般被保険者ではない方と、継続雇用制度対象者は(※)は除かれます。 |
平均給与等支給額 | 継続雇用者給与等総支給額 ÷継続雇用者数 |
(※)65歳未満で退職し、継続して雇用されている者
3. 支給額の対象となる給与等とは?
● 給料、賃金、賞与など
● 退職金は「給与所得」ではないため、含まれない
● 所得税が課税されない通勤交通費などは、原則含まれない。
ただし、継続的に通勤交通費を含めて支給額の計算を
している場合は含めてOKとなっている。
4. 税額控除額
(1) 原則
(当期の雇用者給与等支給額-基準期の雇用者給与等支給額)×10%
(2) 特典(平成29年4月1日以後開始事業年度より
要件③で、賃上げ率が2%以上の場合、上記に加えて、「前年度からの増加分に限り(※)」、12%(中小企業者以外は2%)の税額控除が上乗せできます。
(※)当期の雇用者給与等支給額-基準期の雇用者給与等支給額が限度
(3) 上限
当期の法人税額の20%を限度(中小企業者等以外は10%)
5. 簡単な事例
(1) 例題
平成31年3月期に所得拡大税制が適用できるか?検討してみましょう。
● 3月決算。設立20期目。資本金100万円(中小企業者)。
● 当期の法人税額は400万円とする。
● 従業員は全員、雇用保険に加入しており(一般被保険者)、
継続雇用制度対象者はいない
(各事業年度の状況)
基準事業年度 | 比較事業年度 | 当事業年度 | ||
---|---|---|---|---|
H25/3 | ・・ | H30/3 | H31/3 | |
給与年間支給額 | (B) 2,900万円 |
(C) 3,000万円 |
(A) 3,150万円 |
|
(うち、退職者への給料) | - | (△350万) | - | |
(うち、新入社員への給料) | - | - | (△250万) | |
小計(=継続雇用者への給与)① | 2,900万円 | 2,650万円 | 2,900万円 | |
支給人数 | 200人 | 200人 | 230人 | |
退職人数 | - | △20人 | - | |
入社人数 | - | 0人 | △50人 | |
小計(=継続雇用者人数)② | 200人 | 180人 | 180人 | |
継続雇用者一人あたり平均(①/②) | 145千円/人 | (E) 147千円/人 |
(D) 161千円/人 |
(2) 要件のあてはめ
計算 | 可否 | |
---|---|---|
要件1 | (A)/(B)=108.6%≧103% | 〇 |
要件2 | (A)-(C)=150万円>0 | 〇 |
要件3 | (D)-(E)=13千円>0 | 〇 |
⇒要件①~③すべて満たすので、適用可
(3) 税額控除額
① 原則
{(A)-(B)}×10%=25万円
② 特典の可否
(A)÷(C)=105% ⇒ 特典適用可能。
{(A)-(C)}(※)×12%=18万円 (上乗せ額)
(※)(限度額(A)-(B)を越えないため、(A)-(C)を採用。)
③ ① + ②
25万円 + 18万円 = 43万円
④ 上限(法人税の20%)
400万円 × 20% = 80万円
⇒ ③ ≦ ④のため、③43万円の控除が可能
6. 参照URL
● 金融庁HP(所得拡大促進税制ご利用ガイドブック)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/29pamphlet2.pdf
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