税金の豆知識
Q108 無償贈与の会計・税務処理/申告書の記載
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前回に引き続き、寄付金の会計・税務処理/申告書の記載です。
今回は、実務上、寄付金認定される場合がある「無償贈与」(一般寄付金)を例に、会計・税務処理/申告書の記載についてお伝えします。
(法人から法人の無償贈与を前提にします)
1. 例題
(例題)
● A社⇒B社に土地を無償贈与した(帳簿価格300 / 時価500)
● 寄付金損金算入限度額は100とする。
● その他の取引はない。
● A社、B社はグループ会社ではなく、グループ法人税制の適用はない。
2. A社の処理(贈与した方)
(1) 会計処理
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄付金 | 300 | 土地 | 300 |
● 会計上は、帳簿価額で土地を減少させ、寄付金(贈与損等でも可)を計上します。
(2) 税務処理
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄付金 | 500 | 土地 | 300 |
固定資産売却益 | 200 |
● 税務上も、帳簿価額で土地を減少させる点は、会計処理と同様です。ただし、税務上は時価で売却したものとされるため、借方「寄付金」は時価で計上し、土地帳簿価額との差額は「固定資産売却益」として計上します。
(3) 申告調整仕訳
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
寄付金 | 200 | 固定資産売却益 | 200 |
● 借方「寄付金」は減算(損金)、貸方「固定資産売却益」は加算(益金)となり、一旦、損金及び益金処理を行います。ただし、寄付金については、限度額を超えた金額は「損金不算入」となります。
(4) 別表の記載
(別表4 所得の金額の計算に関する明細書)
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
当期利益 | ||||
加算 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
売却益計上漏れ | (※1)200 | (※1)200 | ||
減算 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
寄付金計上漏れ | (※1)200 | (※1)200 | ||
仮計 | ||||
寄付金の損金不算入額 | (※2)100 | (※2)100 |
(※1)会計処理は「損益仕訳未了」のため、税務上、損益処理したとみなすもの
(加算留保・減算留保)
(※2)(※1)の結果、認識された寄付金(損金)につき、仮計下で「寄付金の損金不算入額」として記載します(加算・社外流出)。申告書上は、別表14(寄附金の損金算入に関する明細書)を記載したうえで、こちらの欄に転記します。
(100%国内子会社の場合とします)
(別表5 利益積立金の計算に関する明細書)
区分 | 期首 | 当期中の増減 | 差引 | |
---|---|---|---|---|
減 | 増 | |||
利益準備金 | ||||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
寄付金・売却益認定損益 | 200 | 200 |
● 加算減算でゼロになるため、記載してもしなくでもどちらでもよいと思います。
3. B社の処理(贈与された方)
(1) 会計処理
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
土地 | 500 | 受贈益 | 500 |
● 会計上は、公正な評価額で受け入れます(企業会計原則)。
したがって土地を時価で受け入れ、貸方は受贈益を計上します。
(2) 税務処理
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
土地 | 500 | 受贈益 | 500 |
● 税務上も時価で取得したものとされるため、会計処理と同様になります。
(3) 申告調整仕訳
会計と税務仕訳で不一致はありませんので、申告調整はありません。
(4) 別表4・5の記載
申告調整がありませんので、記載はありません。
4. ご参考~低廉譲渡の場合~
法人から法人に、時価よりも低い価格で「低廉譲渡」した場合も、考え方は上記の「無償贈与」と同様です。時価との差額を寄付金にします。
詳しくは、「法人が財産を「低額譲渡」した場合の税金は?」をご参照ください。
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