税金の豆知識
Q83 外貨建取引の会計処理/税務処理は?
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輸入や輸出を伴うビジネスの場合、外貨建ての取引も出てきますよね??
これらの外貨建ての取引は・・最終的には「日本円」に換算しないと、「損益を把握」することができません。じゃーいったどうやって換算するんでしょうか?
また、取引時と決済時に「為替レート」の差がある場合、会計処理はどうでしょう??
1. 取引時
取引時は、「取引時点」の為替レートで換算します。
2. 決済差損益
決済時は、「決済時点」の為替レートで換算し、差額は「為替差損益」として処理します。決済時というのは、売掛金や買掛金などを支払う時点のことです。
3. 例題1 (取引時と決済時)
● 3月10日に海外から、100ドル仕入れた。
● 支払(決済)は、翌月4月末。
● 取引時(3/10)レート 110円、支払(決済)時(4/30)レート 113円。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
取引時(3/10) | 仕入(※1) | 10,000 | 買掛金(※2) | 11,000 |
決済時(4/28) | 買掛金 為替差損(※3) |
11,000 300 |
現金 | 11,300 |
(※1)仕入(P/L)の金額は、取引時点の為替レートで確定します。
(※2)買掛金や売掛金は、一旦取引時のレートで換算しますが、その後の決済時には、為替レートが変動します。
(※3)決済時には、決済時点のレート(113円)で支払うことになります。一方、取引時には110円で買掛金を計上していますので、差額の3円は、為替の影響を示す「為替差損益」を計上します。
なお、決済時の差額300は、「仕入」や「買掛金」ではありません。「仕入」は、あくまで取引時点のレート100円×100ドルで確定します。決済差額の性格は、「買掛金」の計上日VS決済日のタイム差による「財務的な損益」、つまり、営業外損益の「為替差損益」となります(営業損益ではない)。
4. 換算差損益
決算期末に、外貨建資産負債が残る場合は、「期末レート」で換算し、換算差額は「為替差損益」で計上します。
5. 例題2 (換算時)
上記の例題1で、3月決算だった場合は、下記の仕訳となります。
● 3月10日に海外から、100ドル仕入れた。
● 支払(決算)は、翌月4月末。
● 決算月は3月
● 取引時(3/10)レート 110円、代金決済時(2/28)レート113円
● 決算時(3/31)レート120円
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
取引時(3/10) | 仕入 | 11,000 | 買掛金 | 11,000 |
決算時(3/31) | 為替差損益(※1) | 1,000 | 買掛金(※1) | 1,000 |
決済時(4/30) | 買掛金(※2) | 12,000 | 現金 為替差益(※3) |
11,300 700 |
(※1)代金決済までの間に、決算日が到来する場合は、買掛金が期末に残ることになります(つまり、決算時点では、代金決済がまだ終わっていない)
買掛金代金は、期末時点では未決済ですが、決算日においては、「仮に決算日に代金決済したと仮定した」差額を「為替差損益」で計上します。決算時点ではお金の動きがないのでイメージが難しいかもしれませんが、決算時点で「買掛金換算」することで、期末時点の「買掛金」の実態(時価のようなもの)を示しているというイメージです。
(※2)決算日に買掛金を期末レートで換算した結果、買掛金は12,000(120円×100ドル)となっています。したがって、代金決済時には、換算後の12,000で買掛金を消し込むことになります。
(※3)決済時には、決済時のレート113で支払うことになりますので、支払額11,300(113円×100ドル)と、仮から買掛金額12,000(※2参照)の差額700が「為替差損益」となります。
(為替差損益の分解)
● 例題1では、決済時に300の「為替差損益」が発生
● 例題2では、決算時1,000円、決済時△700円、差引300円の為替差損益が発生
⇒つまり、どちらの例でも、最終的な為替差損益は300で一致します。
取引日~決済日の間に「決算日」が到来したとしても、決算日にその時点の「為替差損益」が一時計上されるだけで、最終的な「為替差損益」は例題1・2とも一致します。
6. 税法上の為替差損益の取扱い
為替差損益は、益金損金の額に算入されます(法61条の8、9)。
(1) 外貨建取引の換算
税法上、外貨建取引を行った場合の換算レートは、当該外貨建取引を行った時のレート(発生時換算法)とされています。
(2) 期末外貨建資産等の換算方法
税法上、期末に保有する外貨建資産等の換算は、勘定科目ごとに為替レートが決められています。なお、「企業会計上」の為替レートは、微妙に異なる科目があり、申告調整が必要な場合もあります。
簡便的に
● 取引時のレート(発生時換算法)=HR
● 決算時のレート(期末時換算法)=CR とします。
勘定科目 | 法人税法 | 法定換算方法 (※1) |
企業会計 | ||
---|---|---|---|---|---|
外国通貨 | CR | 同左 | 同左 | ||
外貨預金& 外貨建債権債務 (短期) |
CR or HR | CR | 同左 | ||
外貨預金& 外貨建債権債務 (長期) |
CR or HR | HR (※2) |
CR (※2) |
||
有価証券 | 売買目的 | CR | 同左 | 同左 | |
売買目的外 | 償還期限・ 償還金額定めあり |
CR or HR | HR (※2) |
CR (※2) |
|
上記以外 | HR | HR | CR (※2) |
||
子会社 関連会社株式 |
HR | HR | HR |
(※1)法定換算方法とは、税務署に換算方法の届出を行わなかった場合の換算方法です(法人税法施行令122条の7)。
(※2)色塗りの所が、税務(法定換算方法)と企業会計でレートが異なる所です。
「法定換算方法」以外を選定する場合は、選定事業年度の申告期限までに、税務署に「届出書」を提出。原則3年間は継続適用が必要。
7. 為替レートはどれを使う?
(1) 売り相場?買い相場?
● 原則・・取引日のTTM(電信売買相場の仲値。売りと買いの真ん中)
● 例外・・TTB(電信買相場)、TTS(電信売相場)
(2) いつの相場を使う??
原則 | 取引日 |
---|---|
継続適用 | 取引日の属する一定日
・取引月の初日or前月末日 ・取引週の初日or前週末日 |
取引日の属する一定期間の平均値
・取引月の前月平均相場 ・取引週の前週平均相場 |
参照URL
(外貨建取引に係る会計処理等)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/13_2/13_2_01.htm
(外貨建資産等の期末換算方法等の届出)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_31.htm