税金の豆知識
Q32 貸倒等の場合の消費税の会計処理
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売掛金が貸倒れてしまった場合には、法人税上は一定要件のもと損金算入できますが、
実は・・消費税も控除できます。
消費税の性格をよく理解されている方は、「貸倒は資産譲渡ではないし~対価性もないから消費税の対象にならないんじゃ?」って思う方もいるかもしれません。確かに、貸倒取引は、「課税取引」ではありません。不課税取引です。
しかし、申告書上、貸倒にかかる消費税は、「⑥貸倒に係る税額」の欄で控除可能です。
ロジックとしては、売上計上時点で「仮受消費税」を計上しているので(=税務署に税金納めている)、逆に、売掛債権が貸倒れた場合は、当然、控除できるって考えるとわかりやすいかもしれませんね。
対象貸倒債権
(1)貸倒で控除できる債権
発生時に課税売上となっていた債権(売掛金、受取手形)の貸倒です。
⇒発生時に消費税が発生している(税金を納めている)ので、貸倒時に控除できます。
(2)貸倒で控除できない債権
課税売上ではなかった債権(免税売上、貸付金等)の貸倒です。
⇒発生時に消費税が発生していないので、貸倒れても控除できません。
仕訳(貸倒引当金~貸倒損失まで)
いろんな説があるようなんですが・・
当事務所が、普段お伝えしている仕訳をご紹介します。
(例)
売上500万円、消費税40万円(合計売掛金540万円)の場合
借方 | 貸方 | ||||
---|---|---|---|---|---|
売上時 | 売掛金 | 540 | 売上 仮受消費税 |
500 40 |
|
貸倒引当金設定時 (不課税取引) |
貸倒引当金繰入 | 540 | 貸倒引当金 | 540 | 税込で仕訳 |
貸倒損失の計上 | 貸倒引当金 | 540 | 売掛金 | 540 | 税込で取崩し (仮払消費税は立てない) |
貸倒引当金の戻し (不課税取引) |
仕訳なし |
上記処理は、「貸倒は課税取引ではない」という点を重視した方法です。
貸倒は課税取引ではないので、「貸倒損失」時に仮払消費税は計上しません。
(仮払消費税を計上しなくても、申告書では、貸倒に対応する消費税は控除できます)
会計上、貸倒時に仮払消費税を計上しない一方、申告書では貸倒を控除しますので、消費税精算仕訳の際に、申告書で計算された納税額と、差額が生じます。
⇒この差額には、当初債権に対する消費税分に設定された貸倒引当金繰入額が含まれています。貸倒時に消費税控除した時点で、余分に引当計上していた分が確定⇒戻入分となります(仮に、例題の取引のみの場合は、仮受消費税40円が該当)
当該差額は、雑収入ないし、貸倒引当金戻入となります。
(上記仕訳のメリット)
・債権全額に貸倒を設定するため、実務的にも楽でわかりやすい
・仮払消費税を立てないので、二重控除の危険を避けることが可能
(その他の方法)
一般的には、貸倒時に仮払消費税を計上するパターンが多いかもしれませんね。どの処理でも間違いではなさそうですので。
売上値引、割戻、割引の場合は?
売上値引、返品、割戻、割引も「売上に係る対価の返還等」として、消費税上控除できます。ただ、これらの科目は、会計上「売上からマイナス」しているケースも多いと思いますので、申告書作成時に少し迷うかもしれませんね。
申告書の取り扱いは以下のとおりです。
①課税標準額の欄 | ⑤返還等対価の欄 | |
---|---|---|
原則~総額主義~ | 値引等控除前の金額 | 値引き等の金額 |
例外~純額主義~ | 値引等控除後の金額 | - |
純額主義の要件:継続して、値引や返品等を売上から控除する経理処理をしていること
なお、売上割引、仕入割引の会計処理は、値引等と異なり、営業外費用、営業外収益で会計処理を行うのが通常ですので、総額主義になりますね。
参照URL
(貸倒にかかる税額の調整)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6367.htm
(値引、返品、割戻しなどを行った場合の税額の調整)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6359.htm
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