税金の豆知識
Q26 年末調整還付金の会計処理
0view
毎年年末になると、「年末調整で従業員に税金還付する際の仕訳」の質問があります。
まずは、源泉所得税の「期中の処理をおさらいしてみましょう。
期中の処理
源泉所得税とは、本来は、従業員が直接税務署に支払う性格のものですが、会社が毎月給料天引き、概算で預かり、従業員の代わりに翌月10日に税務署に支払っています。
(納付特例は年2回の納付)
(例)
● 毎月の給料1,000、源泉所得税10
●源泉所得税は毎月支払う場合(納付特例適用なしの場合)
借方 | 貸方 | 預り金残高 | |||
---|---|---|---|---|---|
毎月の給与支払時 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 |
990 10 |
10 |
翌月10日 | 預り金 | 10 | 現金(税務署へ) | 10 | 0 |
基本的に、期中はこれで終了ですので、毎月10日に預り金残高は0になっているはずです。
(納付特例の場合は、税務署に年2回しか払いませんので、預り金は0になりません)
年末の処理
毎年12月に、会社が、各人ごとの年間所得税額を正しく計算しなおして、期中に概算で預かった所得税との差額を、従業員との間で精算します(12月給料で調整)。
(例)
● 12月からAさんが入社し、給料を支払うこととなった。
●12月の、Aさんへの給料支払は1,000、源泉所得税は10。
●給料を支払う対象は、Aさんだけとします(それ以外の人は給料0とする)。
●年末調整の結果、Aさんには14返還することになった。
借方 | 貸方 | 預り金残高 | |||
---|---|---|---|---|---|
12月の給料支払時 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 |
990 10 |
10 |
年末調整 | 預り金 | 14 | 現金(従業員へ) | 14 | △4 |
この時点で、会社と従業員のやりとりは完全に終了します。
にもかかわらず・・「預り金」は△4で残っていますね。
なぜ預り金がマイナスで残るんでしょうか?
ここで頭が混乱してしまう方が多いんですね。
なぜ預り金残高がマイナスに・・?
12月の源泉徴収額は、あくまで1ヶ月給料に対する額ですが、年末調整は、1年間の税額の精算ですので、このようなこともありえます。
例えば・・12月に新しく入ってきた人の年末調整は、前職分も含めて行います。
この場合、前職の源泉所得税の過不足分があれば、この過不足分もすべて新しい会社の方で還付します。
一方、新しい会社では、12が分の給料の源泉所得税しか預かっていません。
こういう場合は、12月給料から預かった以上に、従業員に返還する場合も多くなります。
預り金△4の意味
では、この「預り金」△4円は、一体何を意味するんでしょうか?
(1)税務署に対する債権債務を示す
「源泉所得税」の性格を思い出してみて下さい。
源泉所得税は、本来、従業員が直接税務署に支払うべき税金を、会社が代わりに預かったり立て替えたりしているだけなので最終的に会社の「預り金」残高は、0になるはずです。
つまり・・・年末調整を行った時点で、完全に会社と従業員とのやりとりは終了していますので、年末調整終了後に残った預り金残高は「税務署との債権債務」を示しています。
プラスの預り金残高 | 会社が税務署に支払わなければならない「債務」 |
---|---|
マイナスの預り金残高 | 会社が税務署から返還してもらうべき「債権」 |
上記の設例では、会社が従業員から預かった額以上に、税務署に支払っている、つまり税務署から将来返還してもらうべき「未収入金」を意味しています。
(2)実際には返還されない
ただし、実際、税務署から4を返還してもらうかというと・・実務的には、お金を返金してもらう代わりに、翌年1月以降に税務署に納付する源泉所得税額から差し引いて納付する(=納付額を減らす)のが一般的です。
返金を受けるには、要件があったり手続きも面倒なんですね。
(充当に相当期間を要する場合は、税務署に還付請求するのが得策です)。
(3)実務的には?
預り金勘定のマイナスを未収入金に振替える方法もありますが、どちらでもかまいません。
ちなみに、私は預り金のマイナスで行っています。なぜなら、処理がシンプルですし、税務署からお金が返ってくるわけもなく、放っておいたらいずれ消えますので。
以下、すべてを「預り金」勘定で処理した場合の会計処理をまとめておきます。
仕訳まとめ
給与25日払(1,000)、源泉毎月10日支払(10)のケース
日付 | 借方 | 貸方 | 預り金 残高 |
摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
12/25 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 |
990 10 |
10 | 12月分給料源泉 |
12/25 | 預り金 | 14 | 現金 (従業員へ) |
14 | △4 | 従業員とのやりとりは ここで終了 |
1/10 | 仕訳なし | △4 | 12月に預った源泉は 年末調整で0(税務署支払は0) |
|||
1/25 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 |
990 10 |
6 | 1月分給料源泉 |
2/10 | 預り金 | 6 | 現金 | 6 | 0 | きれいになりました |
12月決算の会社は、預り金がマイナスになってしまうので、未収入金に振り替えます
まずは無料面談からお話をお聞かせください。
どんな些細なお悩みでも結構です。
お電話お待ちしております。